スキーというスポーツと出会い、その魅力の虜になったスキーヤーも、年月とともに「オールドシニア」といわれる年齢になりました。これまで一所懸命にスキーをやってきたのは、スキーにそれだけの魅力があったからでしょう。
自分の想いを具現する為の「技術向上の喜び」「仲間との新しい出会い」「風を切って滑る爽快感」などさまざまでしょうが、やっぱり純白の雪山を彩る大自然を「自由にかけまわる喜び」こそスキーヤーの心をとらえて離さない最大の要因ではないかと思います。
人それぞれに、スキーをやる思い(目的)は異なるでしょうが、少なくともある時期、指導員という資格の取得に向って、夢中に滑った時間があったのは確かなことでしょう。そしていまもなお、スキーと何らかの形で関わり続けているのです。
スキー指導員を目指したことが、社会的な価値があるかどうかは別として「自分のスキー人生は最高だ」と思える人は万々歳です。しかし、逆にたいした価値を見出せないとすれば、まことに気の毒といえましょう。
そうだとしたら、自分の思いの達成のために、支えてくれた周囲の人々の家族に対し申し訳ないばかりか、なによりも自分がみじめではないでしょうか。
「燃え尽き症候群」ということばがありましたが、スキーに夢中だった頃をなつかしい思い出として留め、きれいさっぱりとスキーから足を洗ったという方も多いかもしれません。しかし、それは決して勇気ある決断とは思いません。
その間、勤務先や家族の理解はもちろんのことですが、同時に多大な負担をかけてきたことも確かでしょう。所詮、”遊び”でしかないと割り切ることはできたとしても、その代償の大きさを考えると、私は残念でたまりません。
オールドシニアという年齢になれば,若い頃と同じようには滑れなくなるでしょう。しかし、なにも落ち込むことはいりません。いま、颯爽としてピチピチ滑っている若者も、やがて同じ道をたどるのですから・・・。
人間は、いくつになっても夢を追いつづけたいものです。たとえ体力が衰えても、まだ隠れている潜在的な能力は未知数です。知力の助けをかりて、イメージ力を総動員して、”技”について探求する努力を怠らなければ、驚くほどのその能力を開花させることができるのです。
自分の趣味に優劣はないでしょうが、指導員資格の取得のためにかけた時間と費用は、莫大なものになります。大げさに言えば、「半生をスキーにかけたスキーヤー」といっても過言ではありません。
いま、オールドシニアといわれる年齢になり、社会的に、あるいは家庭的な拘束から解放され、ある意味では自分のために自由に時間を使えるようになった今、あらためて自分の人生を振り返り「自分にとってスキーとはなんだったのか」と問うてみる必要があります。
スキースポーツの普及に大いなる役割を果した、筋金入りのスキーヤーのみなさん!!スキー人生を価値あるものにするために「自分にとってスキーとはなにか?」を問い、その意味を探し、夢を追い続けようではありませんか。
平和で、食べることに困らない飽食の時代の中で、安穏とした暮らしに甘んじている生活から脱出し、新しい夢に向ってあの白い魅惑的な世界にチャレンジしようではありませんか。厳しく美しい冬の自然が、私たちに”生きる”という理由を教えてくれるでしょう。
心身をいやし、活力を与えてくれる大自然の息吹にひたり、スキーに費やした尊い時間を皆さんと一緒に共有していきたいと思います。そして、スキーがいかに人生を豊に彩ってくれたかを感謝しようではありませんか。
平沢文雄スキー塾は、スキースポーツを通して、自然と共に生きる人生の価値を問いつづける同志の勉強会です。スキーを通して自然を語り、科学・技術を語り、社会を語り、人間を語り合いながら、スキースポーツの賛歌を”内に外に”発信していきたいと思っています。 |