NHKの番組に『プロフェッショナル 仕事の流儀』というドキュメント番組があります。周知のことと思いますが、この番組に登場する人物は、各界の中からプロフェッショナルと自負している人物を取り上げ、それぞれの仕事に真摯に打ち込んでいる姿や人生哲学を紹介しているものです。
ここでは、その内容のことではなく、単純に「流儀」という言葉についてお話したいと思います。
それは、芸道などで、その一派に伝えられている様式、というような意味ですが、一般には「流派」という言葉の方が判りやすいでしょう。
「流派」とは、流儀の違いによるそれぞれの系統と辞書では紹介されています。
この場合、流儀でも流派でもどちらの言葉でも良いのですが、スキー界の場合を考えると、最近は「流派」といわれるような技術系統を踏襲している集団(スキースクール)が少なくなっている気がします。
以前では、オーストリア派、フランス派、西ドイツ派、アメリカ派、などと流派を全面に押し出し、PRしているスキー学校があったものです。最近はいくつか流派を主張しているスキー学校もありますが、特別に流派にこだわりをもっているスキー学校も少なくなりました。
流派を主張するには当然のその原点になるメソッドを記した「教程」がなければなりません。
日本においては、「スキー教程」題して発刊している団体は、㈶全日本スキー連盟(SAJ)が出版しているものと、㈳日本職業スキー教師連盟が出版している2つくらいしかありません。それも、宗教の経典のように変わることのない規範があるわけではありません。
2つの団体にしても、年々進化するスキー用具や技術にあわせ、またスキーヤーの志向の多様化に対応して、「教程」そのものが変わっています。
ところで近年、圧倒的に増えたシニアスキーヤーの滑りをみると、たしかにスキーを履いてスキーを楽しんでいるようですが、その滑り方はバラバラ勝手で、「流派」などなんのその、自己流の滑りが目につきます。
スキーはどんな滑り方でも楽しむことはできますが、スキー技術のなんたるかも知らずに、ただ滑り下るだけでは、危険な行為です。
近年のスキー用具は、旧スキー用具と比べ、比較にならないほど高性能になっております。スキー操作もやさしくなり、短時間で滑れるようになります。
以前の用具でしたら、とても簡単には滑れなかったスキーヤーは、あたかも上達したような錯覚を起こします。そのために危険な暴走スキーヤーが各地のスキー場を荒らしまわります。他人に言われる筋合いはないといわれてしまえばそれまでですが、これではシニアスキーヤーの時代が来たと言っても、決して喜ぶべきことではありません。
少なくとも、スキーを楽しむためには、しっかりしたメソッドを発表している「流派」に所属して、安全で効率的なスキーを学ぶことが必要です。
(平沢 文雄)
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