スキーが日本に伝えられて、100年が過ぎました。
テニスやラグビーの歴史からすると、意外に短いと思われる方もおいででしょう。
その短いスキーの歴史の中で、スキー用具は、新素材の開発とともに、すごい勢いで進化してきました。いまでは古い時代の用具のころには考えられないほどのハイテク用具が使われています。
そのおかげで、スキー技術はもちろん、安全面の向上は目を見張る程です。
「スキーは危険なスポーツ」という時代は終わりました。障害発生率というデータでも、他のスポーツに比べ、大変低い数値が公表されています。
だからといって、まったく怪我がないわけではありませんが、その原因の大半は、他損か過信、または不注意によるものです。
この用具の目覚ましい進化によって、スキーはシニアになっても、十分に楽しめるスポーツになりました。いや、それ以上に「上達できる」希望の持てるスポーツになったのです。
私が指導対象としているスキーヤーの平均年齢は、なんと70歳を超えています。
その年齢になっても、なおスキーに夢中になれるのは、ひとえに、上達という希望があるからでしょう。
近年、シニアスキーヤーがどこのスキー場でも目立つようになりました。大変結構なことと思います。しかし、私が心配していることは、単に、観光旅行的なスキーでは、やがて飽きが来て続かないのではないかということです。健康の為とか、気分転換、ストレス解消という理由をつけても、それだけでは夢中にはなれません。
知らなかった人と知り合い交流をする機会を作るということも大切ですが、シニア世代になって大切なことは、なにかひとつでも、夢中になれることをもつということです。スキーにはその夢をかなえてくれるだけの魅力があります。非日常的な白銀の世界で、だれに気を遣うことなく、自分の世界に没頭できるスポーツはあまりありません。その上、スキーは初心者は初心者なりに満足感を得られるスポーツですから、どなたでも楽しめます。さらに、自然の力で滑るスポーツですから、シニアになっても充分に上達の喜びを得られるのです。
<スキー用具と他のスポーツ用具との違い>
スキー用具は、体の一部のように「一体化」されるものです。握り方を調整しながら使用できる用具とは違います。いったんスキーを装着したら、そのまま使用する用具なのです。その点、スケート靴と同じといえましょう。もし、スケート靴が合わなかったり、種目用(フィギア、スピードスケート)でなかったとしたら、当然上手く滑れませんし、上達もしません。
また、たとえば、料理をする場合を考えてみてください。
材料の組み合わせ、道具の選択、料理の手順、火加減、味付け、盛り付け・・・
おいしい料理を完成させるためには、まとまりを考えて調理に移られると思います。それぞれがばらばらであってはならないのです。
スキー用具も同じです。
すなわち、スキー用途と性能、スキー靴の適性、ビンディングの着脱と安全性、ストックの使いやすさなどが、本人に適正かどうかは当たり前のことですが、「どんなところを(用途)、どんな滑り方で(技術)、どこでレッスンを受けるか(指導法)」まで考えてスキー用具を選ぶ必要があるのです。
スキースポーツは、スキー用具の性能とスキーブーツの適性と、スキー技術と指導法の4点の整合性が必要なスポーツということを知っておいてください。
■私が指導するスキー技術は、日本で初めてシニアスキーヤー世代の為に考えたものです。(ベストスキーテキストDVD&BOOK)スキー技術は、どこのスクールも同じことを教えているわけではありません。
日本の習い事の流派とは違いますが、一律に体力差を考えない技術指導ではなく、シニアに適した滑り方と練習法を確立しました。体力の減退するシニア世代であればこそ、合理的で効率的な技術が必要です。今シーズンはこの滑り方を「バイペダリング・クロスターン」という名称で今年世の中に発表します。
■スキーには、スキー、スキーブーツ、ビンディング(スキーとブーツをつなげる用具)それにストック、ゴーグル、手袋、ヘルメット、防寒用ウエアも必要になります。こうみるとお金のかかるスポーツであることは間違いありません。今でもなお欧米でファミリースキーが盛んなのは、出費以上に価値のある魅力的なスポーツだからでしょう。
■スキー場や宿に、スキー用具のレンタルが用意されていますが、私はあまりおすすめできません。どうしてかといいますと、スキー用具(特にスキー、ブーツ)はレンタル自転車とは違い、スキー技術に大きくかかわっているからです。用具の適性がなければ、思うように滑れません。当然上達も遅れます。楽しいスキーであるべきものが、楽しくなくなってしまいます。
<おわりに>
私が一貫して思っていることは、スキー用具はファッション用品ではなく、実用品だという考え方です。実用品であるなら、使い勝手がよく、成果が上がる用具が必要でしょう。その思いに立ってスキー用具のアドバイスをしています。商業ベースで生徒不在のアドバイスは、私のスキー教師根性が許さないのです。
みなさんに、新しい合理的なスキー技術を身につけて頂きたいと心から願っております。さあ、いまからでも遅くはありません。思い切って行動することです。私たちがサポートします。
(平沢 文雄)
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